昨季のリヴァプールはアルネ・スロット監督のもとで5位(63得点53失点)に終わり、5月末に監督が交代。26‐27シーズンはボーンマスをUEL出場へ導いたアンドニ・イラオラが監督に就任した。
フォーメーション
基本のフォーメーションは4-2-3-1だ。攻撃時は右SBのアラウホもしくは左SBのケルケズが高い位置を取る3バックに可変する。SBが大外を取ることでサイドアタックの選択肢が増え、ウイングのガクポやバルコラが中央でもプレーできるようになる。ウイングとCFのイサクを近い距離で連携させることも狙いの一つだ。
ビルドアップ
ビルドアップは長身のイサクやガクポを狙ったロングボールやウイングを走らせるミドルパスなど、とにかくFWに素早く預けるようなパスが目立っている。パスが通らなくても敵陣で奪い返せばチャンスになる、自陣でボールを失うよりはタフでテクニックもあるFWに早く預けようという見方においては理にかなっているが、ボールロストの多さは気になる点だ。
攻守の形とキーマン
アレクサンデル・イサクは相手の最終ラインの裏を狙う点取り屋だ。イサクがCBを引きつけることでヴィルツやガクポにスペースが生まれ前を向くことができる。イサクに縦パスが通ればそのままフィニッシュ、フリーになったガクポやヴィルツにパスが通っても決定機という寸法だ。
イサクが今季挙げた4ゴールのうち3得点をアシストしているのがコーディ・ガクポだ。イプスウィッチ戦ではイサクの2得点をどちらもガクポがお膳立てし、ボーンマス戦では右サイドを個人で突破したクロスが決勝点につながった。彼は左右どちらのサイドでもプレーでき、ボールを持つと迷わず縦へ運ぶ。ガクポがサイドで相手SBを引きつけて前へ運ぶと、相手CBはカバーに出るかイサクを見続けるかを選ばされる。サイドのカバーに出ればイサクが空き、中央を固めればガクポが深くまで侵入することになる。
守備ではハイラインを維持しながら4-4-2の形を形成するが、フロリアン・ヴィルツがプレスをかけるとチーム全体で”人を捕まえてボールを奪いに行く守備”のスイッチが入る。イプスウィッチ戦ではフロリアン・ヴィルツが相手のボールホルダーにプレスをかけたところからサイドでボールを奪い、それが得点につながっていた。
しかし実際にリヴァプールの試合を見ているときれいな4-4-2の形を形成しているシーンは少ない。攻撃時にボールを奪われるネガティブトランジションのタイミングではブロックを作る余裕などなく、ガクポ、バルコラ、ヴィルツ、イサクのFW陣が全力でプレスをかけてボールの即時奪回を試みているからだ。常にハイラインで攻撃時は3バックにもなるチームなのだから、ハイプレスによるボールの即時奪回は最適なオフェンスであり最善のディフェンスなのである。
ボール保持にこだわらず選手の運動量とスピードを活かす嵐のような攻撃と守備の方法は今なおリヴァプールの代名詞となっているが、それを支えているのはファン・ダイクをはじめとした最終ラインの選手たちだ。にもかかわらずSBの選手はアラウホもケルケズも攻撃的で試合中は攻撃の度に交互に代わるがわる前線へ顔を出している。相手のハイラインの裏を狙うロングボールやスピーディなカウンターへの対応だけでもハードワークだと思うのだが、気が付くと右SBのアラウホがセンターサークルのそばで攻撃参加していたりするし、SBにはかなり自由かつ幅広いタスクが与えられているように見える。
リヴァプールの攻守は最終ラインの選手によって支えられているといえるだろう。
しかし、相手のロングボールに対してファン・ダイクが飛び出したり、ボールロスト時に相手のボールホルダーを総出で取り囲んで取り返しに行くカオスなシーンを見ていると「なにがなんでもハイラインで点を取るんだよ!」という根性が見えて、見ていて楽しくすごく好感が持てるチームだなと改めて思った。
昨季からの変化と今後の展望
今季は多くの選手が入れ替わった。サラー、ロバートソン、コナテが契約満了で退団し、C・ジョーンズも移籍。代わりにバルコラ、ジャケ、ムニョスを獲得し、アラウホを期限付きで加えた。昨季のチーム得点王エキティケ(11得点4アシスト)は負傷で出遅れており、昨季6得点7アシストのソボスライは今季ここまで1得点。得点源が右のサラーから中央のイサクへ移ったのが、最大の構造変化である。
今季は第5節終了時点で2勝3分の無敗で6位(7得点4失点)。開幕2試合で4失点した守備が、その後3試合連続クリーンシートへと締まってきた。一方でホームは2分で未勝利。引いた相手をどう崩すか、ダイナミックな攻撃陣をどう活かしきるかが今後の鍵となる。

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